平成から「令和」の元号は激動日本歴史の節目

 昨年11月、東大の大沼保昭名誉教授(政治学9が死去(72)した。今年2月、東京・如水会館で「偲ぶ会」が開かれた。

 大沼教授は生前、朝日新聞紙上や政治雑誌で「戦犯を合祀した靖国神社に首相は参拝すべきではない」と述べ、「こうした行動が中国の尖閣列島狙いを生み、日本の戦争の反省がない、とみられる」と力説していた。

 これは私が以前から考えていたことと同様で、安倍首相の靖国参拝は「失政」である。

 また、戦前からスタートした第二次大戦は、日本の侵略戦争でありながら敗戦後、70年もたったから、あれは「自然災害」にでもあったような空気で「終戦」という言葉でごまかしている。これは世界歴史の中では通用しない。

 敗戦を決定づけたポツダム宣言は、日本の無条件降伏であったことを日本人は忘れてはならない。

 あの自民党嫌いの朝日でさえ、3月25日の紙面で次のように述べている。
「どう振舞うべきか。日本を取り巻く外交・安全保障環境をみると、極めて困難な事態に直面していると、最近ひしひしと感じている。(中略)松下政経塾副理事長の神蔵孝之・イマジニア会長が『中国が強力な力を誇り、朝鮮半島が政治的に揺らぐ時期は、日本の歴史の変わり目となってきた』と指摘している」(編集委員・佐藤武嗣)

 続けて同紙で「ある外務省幹部は誇張を交えて、日本の今後の選択肢を4つ挙げた。①米国に徹底的にこびへつらう。②中国との関係を重視して尖閣列島などを手放す。③防衛費を5倍にする。④核兵器を保有する──」(以下略。同)

 朝日は他者に悟らせ、間接話法にしているが、朝日はこれまでと同じようなアジア外交で済ませられないという緊張感がみなぎっている。

 私の恩師、片岡鉄哉氏(スタンフォード大学、フーバー研究所特別研究員)は平成19年73歳でガン死去・

 生前、「日本はやがて米国が離れていく分、中国が日本の平和を守ってやる──と近づいてくる可能性がある、その時、日本国民はどうするのかね」と問いかけて死んでいった。トランプ大統領の登場はそれから10年後だ。

 日本では医学界の権威ある長老だが、10年前から「日本は、いつの日か再び広島、長崎のような原爆投下に見舞われる時代がやってくる。それは私が死んだあとでしょう。投下する国はどこかわからないでど‥‥」。そして本人は「影響あるので、私の名は伏せておいてほしい」。

 また、本年1月30日の朝日、1頁分のインタビュー記事で経済同友会代表幹事の小林善光(よしみつ)さん(72)は「敗北日本、生き残れるか」(注・村井=「敗北日本」は平成の30年間を指している!)のタイトルも中身もすごい。

 そのサブタイトルにしても「技術は米中が席巻、激変に立ち遅れ、挫折の自覚ない」、「財界は権威失う、異文化と接し、進取の気性培え」──はショッキングな日本への直言であった。

 小林氏は「内閣調査(2018年6月)で75%の国民が今に満足している。心地よいゆでカエル状態(中略)、カエルはいずれ煮え上がるでしょう」と。

 財界が日本政府に丸め込まれている「あやつり人形」の中で、小林発言は日本財界人として勇気のある発言であった。

 そんな中で近年、日本のやっている永田町政治は、ウソ八百のモリ・カケからイカサマの厚生労働省統計問題ばかりに集中、日本国家の先ゆきは全く霧の中。

 戦前、日本人は政治、軍事、財界から国民まで「戦争良し」とする空気を作り上げて戦争に突入した。敗戦後の今、再び「ゆでカエル」状態なのに、声をあげない日本の空気をしかる。新しい時代に政府に直言できる「シンクタンク」が必要。1カ月後には「平成」の名が消える新しい時代に入る。

平成31年(2019)3月25日
村井 実