教育勅語持ち出しは教育クーデターだ
国会で注目の森友学園の籠池理事長が証人喚問（３・23）され、国会はテンヤワンヤである。
この問題の柱は①国有地の大阪の土地が時価約９億円のものが地下のゴミ問題を理由に、１億８０００万円にまでバーゲンセールして国庫には、たった２００万円しか入らなかった。
②さらに、この土地の小学校建設に７億、14億、23億円の３種の契約書が流れた不可解。そして③は籠池証人は、首相夫人に謝礼として１００万円送った（首相夫人は受け取りを否定）──など①②③の３本のあやしげな矢が世に放たれて大騒ぎ。
当初、安倍首相は、これほどの大問題のスキャンダルに発展するとは思わなかっただろう。
しかし、森友学園問題について首相は国会で「私も妻も何ら一切、関わっていない。もし、そんな事実が出たら、首相も国会議員も辞めます」と気色ばんで見栄を切った。
その後もテレビ中継を見ていた私は「これほど籠池理事長と関わってきたのに最初、姿も形も見たこともなかった」ようなセリフを言ったことにあきれる。
いつの時代もそうだが、政治家の信念とは、この程度のウソ八百である。
次に主張したいのは、私はロッキード事件、田中金脈事件、リクルート事件などで国会の「証人喚問」のたびに、記者席で直接取材をしてきた。
そうした過去の証人喚問の取材をして思うことは、籠池証人だけを一方的に証人喚問しても「事実」は出てこない。
自民党などは反対するであろうが、関係する人物は官僚であろうと、政治家であろうと、民間人でも喚問すべき。首相夫人といえども例外ではない。
籠池証人喚問の発言をみていると、同証人の証言はズサンすぎて、見ちゃおれないほどの「素人おじさん」である。偽証罪になり得るものがいっぱいだ。（自分よがりの性格に欠陥あり）
だからといって政治家、官僚の発言を信用しているのではない。財務省の役人答弁は、まるで子供だまし、のような白々しさを感じる。
国有地払い下げの〓〓は国すなわち財務省の重要書類を破棄している悪事をあばくことであり、籠池理事長個人で収束する問題ではない。
首相や首相夫人が森友学園人脈と何年も前から、何らかの形で接近、接触していたから、官僚群は殿（＝首相）のために「いざ鎌倉」の心を決めて、オール「忖度」したことに他ならない。役人のあからさまな忖度に国民は笑いが止まらない。
従って私は、犯人は忖度とみているのだが、証明しづらい案件だ。時間をかけても財務省、大阪府の関係者を国会に証人喚問していただきたい。
国勢調査権を民間相手に脅してふりまきながら、財務省を伏せておくのは権力の横暴である。
私は若い記者時代、国会や政治家のパーティなどで佐藤栄作、三木、福田（赳夫）、中曽根、橋本、小渕、細川、海部ら、あまたの首相夫人と会って取材や会話をしてきた。それぞれの品位と首相の妻らしい振る舞いを見てきた。
それに比べると、安倍夫人はこれだけのスキャンダルが出てきても、いまだに「私人」か「公人」の区別もつかないとは……トホホである。
今や、日本の首相夫妻は世界の笑いものになっている。（東京・有楽町の外国人記者クラブで）、中国は「安倍首相はグチャグチャ」（同記者クラブ）とまで見下して、私にまともに説明せず意味不明。これでは日本は隣りの韓国大統領も笑っておれない──。
次に話題にしたいのは、森友学園のバナナのたたき売りのような国有地払い下げの低価格に国民の目が走りがちだが、もっと根本的なことは森友学園とつながる安倍首相の「教育観」の異常さにある。
私は今回珍らしく週刊誌を大量に次々と買って読んだ。そうした中で私が注目していた森友学園の「教育」に絞って特集を組んでいたのは、たった１冊。「サンデー毎日」（３・16号）だけだった。
そのサンデイ毎日の見出しは「森友疑惑は思想事件である」。サブタイトルは「教育勅語と安倍政権の危険度」。
私がなぜ、右のたった１冊の週刊誌の見出しに注目するかというと次のことだ。天皇を神とみたて、天皇のために身をささげる国体という「教育勅語」は敗戦後、戦勝国アメリカから忌むべき忌まわしい精神訓だ、と批判され、国会は衆参院とも「失効の決議（てん付ける）」をしている。
右のように第２次大戦の敗戦を反省した教育勅語をいとも簡単に戦後、教育界に復活させている現状は、大阪という一地方といえども「教育のクーデター」を起こしたとんでもない事件なのである。
戦後、日本が獲得した教育勅語の解体と、それに代わって誕生した新生民主主義を安々と失ってはならない。そうしたことを今、何も言わない、問わない日本教育の将来はどうなっていくのか。
私の意見は杞憂と思われるかもしれないが、日本教育界は歪（ルビ＝ゆが）んでいる。マスコミはなぜ、もっと大道に出て叫ばないのか。
ところで森友学園の国有地払い下げ問題は、右翼のシンボルとなっている「日本会議」が、安倍首相と籠池理事長を結ぶ「点と線」となっている。
日本会議は現政権・自民党の圧倒的多数が加入しているから厄介である。「ポスト安倍」（安倍首相の後）まで国民の目がさめないだろうから、なおさら厄介だ。週刊誌の中には見出しが「安倍晋三お友達のレベルが低すぎて」（週刊現代３・25～４・４号）とあるが、第１次安倍内閣時代の再現に近い。
さらに週刊朝日（３・17号）は「安倍首相、お友達学校に公有地36億円を無償譲渡」のタイトル。それは愛媛県今治市内の土地を新設される岡山理科大に放出するということで、安倍首相の学校スキャンダルは今後も続く──。
今、世論（朝毎読、ＮＨＫ）の総意は70～80％まで安倍首相夫妻の釈明はイカサマと映っている。それでも突っ走る安倍機関車は「自民１強」にあぐらをかいた暴走である。
それにしても、国際情勢は東西を問わず緊迫している。まして日本を取り巻くアジアでは北挑戦とアメリカが「一触即発」の状態なのに、日本政界は黒い霧の学校ごっこのような別世界にいる。これで良いのか。日本、日本人よ！
平成29年（２０１７）３月
村井 実