新党「国民民主党」に国民は振り向かない!

=戦略家・小沢一郎を欠いた日本政治の損害10兆円=

 民進党と希望の党が合流する新党「国民民主党」(国会議員61人)が4月26日の両院議員総会で決定。5月の連休明けにスタートする。

 これには同じ釜のメシを喰った野党仲間の立憲民主党(同56人)は、そっぽを向いている。

 この動きについて、野田佳彦元首相や岡田克也代表は次なる合流(立憲民主党と国民民主党)をにらんで様子見。そんなのんびりしている暇があるののだろうか。

 国民民主党は5月1日のメーデーに間に合わせようとして、急ごしらえの合体だったのだろうが、今の野党連中には全く政党としての戦略家がいない。

 なぜかというと、4月27日は午前10時から海の向こうの韓国と北朝鮮が板門店を越えて南北朝鮮トップが世界のニュースを席巻して、歴史的会談の瞬間が迫るという時、よりによって日本国内の「国民民主党」誕生ニュースは、ゴミの中のゴミのニュース─。

 3大紙も他紙もテレビニュースも、「国民民主党」ニュースは、ニュースというよりも「囲み記事」風にして一人前のニュース扱いにしていない。

 国民から見れば「あ、またか」といったタメ息ついたようなつぶやきにしか聞こえない。

 例え話にしては品がないが、街角で美男美女がキスでもしていると、通りがかり人たちはハッと見とれて立ち止まる。

 しかし、輝きもしない政党と未来の政策が見えない政党が路上でキスをしても、通行人は立ち止まらない、すぐ立ち去る。

 こうした光景を国民は何度、見せられたことか。もう、こりごりの永田町の野党風景だ。国民への裏切りである。

 もっと言えば、政権交代する意思もなく「税金ドロボー」である。

 総選挙、参院選挙のたびに登場する野党の票田、連合グループは、大企業のための組合で、もはや「風吹かず」、組合離れ著しく、現代の若者はついていかない。

 なぜ、若者、学生が離れていくのか、野党は研究したことがあるのだろうか。

 そこで私は先に野党に「戦略家がいない」─と記したが、世界は北朝鮮と韓国のトップ会談に、かたずを呑む、という時、野党「国民民主党」誕生を出してくるとんまがどこにいるのか、と問いたい。

 この「4・27」をはずしてニュースのない平常な時に「国民民主党」を売りこめば、マスコミは
大きく扱い、その広告費は数億円、いや数十億円に相当するPR効果大だ。それを無残にもチャンスをのがした。

 もし、小沢一郎がこの野党お中軸にいれば、「国民民主党」のこんな安売りバーゲンなどしなかっただろう。

 ところで、私がよく顔を出す東京・有楽町の外国人記者クラブの仲間の話だが、某国特派員記者は次のように語った。

「5億円ぐらいの疑いだけで証拠もなく小沢をけ散らした朝日などの反小沢論調は理解できない。今、小沢一郎のいない野党は、バラバラでしょう。国民の意思からウソばっかり答弁している安倍一強政権は、日本んぼ民主主義に底を開けたとんでもない政権ですよ。小沢さんにどれだけ批判があろうとも、小沢さんのいない日本の民主主義は10兆円から20兆円分も日本株(日本の国際信用)を落としてしまった。それに日本人は気がついていない。」

 外国人記者で日本通の有名人ジャーナリスト、カレル・ヴァン・ヴォルフレン氏(1941年オランダ生まれ)は、「SAPIO」(2012、11月号)で、次のように語っている。

「キャリア官僚が自分たちに好都合の政治システムを作り上げている例は、日本以外にない。そして日本の官僚は、ビジョンをもって改革を実現しようとする政治家を叩き潰すのが得意だ。

 象徴的な例が小沢一郎だ。検察も裁判所も違法性はないとした政治資金問題で『腐敗政治家』という偽りのリアリティが作られ、マスコミが後追いし、官僚を手助けした。

 本来はマスコミが監視すべきだが、その役割を果たしていない。新聞をはじめとするマスコミの上層部とエリート官僚たちには、秩序を乱したくない、という共通の利害がある。自分たちの知っていること、持っている力をいつまでも手中に握っていたい、という彼らの意思は非常に強固だ。(中略)

 改革の鍵を握っているのはマスコミだ。有能な政治家の活動を妨害せず、官僚を監視する。ジャーナリズムの真価が問われている。」

 先日、竹橋の毎日新聞本社ホールで政治評論家の大下英治氏の講演(4・20)で、次のような重要な発言をしている。

 「自民党が今日まで政権を維持できたのは、歴代幹事長がしっかりしていたから続いてきた。途中、小沢氏によって民主党政権になったものの、とにかく幹事長の力量がその政権を保ってきた。

 その自民政治を見てきて、二階幹事長までが自民党政治で、その後の自民党はどこへ行くのか、消えていくか滅びるか、わからない。」

 そして、大下氏は次のようにも小沢評論を下した。

 「自民党政治を長く見てきて、自民党が潰れそうになったり再建したりの浮き沈みの中、そのたびに小沢一郎の名が出てくる。日本の危機が迫った時、必ず小沢の名が不死鳥のごとく出てくる。しかも28年間も小沢幹事長の名が消えたり浮かんだりして今日に至っている。

 浮き沈みの激しい権力闘争の中で28年間も小沢の名が消えない現象は珍しいこと。今後も小沢以外の政治家では、こうした人材は出てこないだろう。」

 私はこうした不死鳥のごとく「小沢幹事長」の名が浮上する、という大下発言に共鳴できるし、玄人の政治評論家・大下氏を高く評価する。

 大下氏の腹の中には小沢待望論を秘(密)そめていると思う。それだけ今の日本政治がチャランポランで瀕死の状況にあることを、私も大下氏も共有しているということです。

 一方、大下氏は次のようにも発言して野党批判した。

 「野党がダメなのは、皆んな党首になるのは俺だ、俺だ‥‥と手をあげているのでバラバラだ。

 首相になった自民党の田中角栄、竹下登は「みこしに乗る人」、「カゴをかつぐ人」、さらに「ワラジを作る人」などに分かれていた。そんなこともわからない野党は、いつまでたっても万年野党だ。」

 野党新党は、民進(2%)、希望(1%)を加えても3%の国民民主党─これで何をしようというのか。さらに、仮に立憲民主党(11%)が加わったとしても、合計14%の支持しかない。これで政権交代といっても「ヘソで茶をわかす」というお笑いだ。

 だから、実体のない右翼で安倍首相のみこし「日本会議」という輩(やから)を自由に国会内で泳がせているのも、野党の国民民主党や立憲民主党が余りにも幼稚すぎ、頭でっかちのインテリぶっている姿は、まことに悲しい。

 日本国民の多くは「八っつあん、熊さん」の庶民であって、松下政経塾のような人間は、ほんのひとにぎり。松下政経塾は失敗の産物だった。野党はもっと国民庶民に目線を下げて、自民党のように平凡な町内会、自治会の票をとっていくようでなければ、政権交代は絶対に起こらない。

 自民党は国民から何と言われようとも「選挙は戦争」という言葉が共通しており、角栄時代には、田中派の参謀たちが毎日、赤鉛筆をなめなめ、候補者選定に余念がなかった─という伝説が今も記者仲間に伝わっている。

 それに比べると、今の野党は「死にもの狂い」の選挙対策が全く見えてこない。目下、野党候補(共産党を除く)が決まっているのは4分の1というお粗末。だから、返す返すも私は「野党の税金ドロボー」とののしるのである。

平成30年(2018)5月1日
村井 実