<令和元年参院選>「N国」と「れいわ」台風の目

=国民そっちのけ野党の火遊び=

 参院選(7・21投票日)が終わった。本来なら参院戦でなければならないが、与党の自民・公明は別として、野党のふがいなさが相変わらず鮮明に浮き彫りにされている。

 野党には「政治とは戦(いくさ)である」──という真剣さがない。枝野幸男(立憲民主党)、玉木雄一郎(国民民主党)は野党の火遊びにみえる。だから、野党の政権交代が全然みえてこない。

 マスコミから見れば憲法改正に必要な与党の「3分の2」に注目していたが、結果は与党の「過半数」でとりあえず過熱の改憲は遠のいた。
(目下、マスコミは、〈朝日、毎日、東京〉グループ対、〈読売、産経〉グループのつなひき)

 しかし、国際情勢の急激な変化に日本はついていけるのか心許ない。

 すでに報道されているように、今回の投票率は48.8%で5割を切り、戦後2番目の低さとなった。

 なぜこのような数字になるかといえば、世論調査(朝日)でみられるように、①投票しても政治は変わらない(43%)、②政治に関心がない(32%)、③投票したい候補者や政党がない
(17%)──となっている。

 それほど今の日本政治はドンしてヒンしている、としか言いようがない。シンクタンク群、政治学者たちは、上の①②③を分析してほしい。今、それも見えない。

 与党は後に述べるとして、今回の参院の全国32人の1人区全てに「統一候補」を立てた野党共闘は10勝22敗(3年前は野党共闘11勝)で与党圧勝である。
(野党が勝った10人は新人9人、うち女性5人、8人が無所属だから、党の看板がなくても玉がよければ、与党と互角に戦えることもハッキリした。)

 ほとんどの新聞、テレビメディアは、「野党共闘は3年前に比べて1減だから善戦した」とらえているが、とんでもない。早くから真剣に、まともに野党協力していれば互角の16席は取れた。

 参院選は衆院解散と違って3年ごとに半数改選という決まった「行事」なのに、野党はそれをほとんど無視した形で放置して、インスタントラーメン並みの選挙戦に突入。

 その証左に今回の参院選は今年5月になって、ようやく野党統一候補選びに動き出した。この野党統一作戦は毎度、風頼みの他力本願。どこまで統一なのか、首をかしげる。

 敵なる自民党は何と言われようと昨年12月末(又は今年正月)までに、ほぼ「自民公認」候補をそろえて、地道に政治活動を続けていた。従って、参院選は「自民大勝」と言えなくても、それなりの安倍政治の基盤を維持した。

自民は大人、野党は学生運動の類

 私が野党に拘るのは、野党が強くなければ自民独裁(いや、自民独走か)も変わらないし、日本政治が変わらない──と考えているからです。

 立憲民主と国民民主がしっかりしないから日本政治をぶちこわしている。自民を批判する前に野党の学芸会を笑う。野党の生徒会を笑う。

 もう少しまじめに言うと、野党を代表する立憲民主も国民民主も学生運動の域を出ていない。いや、学生運動以下だ。(自民党の河野太郎外相、小泉進次郎は共に原発反対だが脱党しない。もっと言おう!古い話だが民主党時代の野田首相は、小沢一郎の消費税反対組約50人の脱党を勧め、野田は実行した。

 これで日本野党主流の民主党は死んだ。有権者の国民は今、消費税反対が圧倒的にに多い。野田の器の小を実証した。このことから権力闘争に生きる「自民は大人」。旧民主党は子供の学芸会か学生運動の類(たぐい)で野田は小沢グループを排除すべきでなかった。

 小沢一郎を擁護しているわけではない。権力闘争とはそういうもので、権力を取れなければ政治の夢は一辺たりとも実現しない──。

 そこで朝日(7・24)は立憲民主の枝野代表の「大きく成果をあげ、大きく前進した」や国民民主の玉木代表の「一定の成果が出た」をそのまま批判なく持ち上げている。他紙もNHKも似たり寄ったりだ。

 とりわけ日本マスコミは与党に辛いが野党に、ことさら甘く、これでは日本に野党は育たない。枝野、玉木の駅前などの大衆を前にすると、「演説に酔っている」としか言いようがない。どんな立派な公約をしようとも、野党はしょせん野党。野党では予算の1円でも動かせない。

 野党の本丸・連合は立憲民主(自治労などの官公労系)と国民民主(電力総連など民間労組系)に分かれ、参院選比例区で5人ずつ計10人を立てた。

 立憲は5人全員当選したが、国民は2人落選。国民から出た電機連合の組織内候補は個人票19万超を獲得し、立憲のトップ当選者を3万票余りを上回ったが、当選枠に入れなかった。

 連合の神津里季生会長は記者会見で「二度とこういう選挙はやりたくない」(7・25)と嘆いた。旧民進党が二つに分かれた歪(ひずみ)は比例に端的に表われた。

 上の言葉が真実だ。元を正せば立憲民主も国民民主も旧民進の同じむじな。旧民進は今回の参院選で立憲(改選議席9→当選17)、国民(同8→同6)で立憲は倍増した。といっても憲法以外では同根であり、やがて立憲と国民は巨大な自公政権の前で「収束」(あゆみ寄り)せざるを得なくなる時期がやってこよう。それも出来なければ、令和時代は別の新しい政党が伸びていく。

総選挙でやがて枝野・玉木の野合のX日くる!

 世界がこれほど激動不安な時代(米朝の核交渉、中米貿易、日韓悪化、自衛隊ホルムズ海外派兵、香港の赤化・・・)なのに、日本は国内問題だけいじくってるが、外交は大丈夫なのか?

 あんな吉本興行のお笑いのために、1日5時間余りのテレビ生中継する日本社会。日本はどこか狂っていないか。

 そこで自民党に移るが、今回の改選数74のうち5割に当たる38議席(選挙区)を獲得した。比例区は前回と同じ19議席で1771万票を獲得したが240万票減。

 しかし、棄権をした人を含む有権者全体に対する絶対得票率は2割を切っている。以前に比べ安倍人気はかげりが見えている。それでも安倍首相は「国民から力強い信任を得た」とまるで裸の王様だ。

 朝日は社説(7・24)で「与党野党の別なく、代議制民主主義の深刻な事態」と悲観的だが、それ以上を追求していない。

 マスコミはその次を追求すべき責任を問うべきなのに、それがない。橋下徹・元大阪市長は、そこを指摘しているが、私も同感。日本政治には建前論が多いが、橋下氏にはそれがない。

 冒頭の「投票しても政治は変わらない」に対して、どの政党も国民も何も討論しない日本。主要テレビも騒がない。国民は与党にも野党にもウンザリ。

 こんなムダな参院選、そしてやがてやってくる衆院選をいつまでも野党はゆるふん(=ゆるめたフンドシ)で続けようとするのか。この参院選野党惨敗で枝野・玉木はやがて総選挙へ向けて野合するX日がくるだろう。

 それにしても旧民主党時代からの悪しき伝統をここに指摘しておきたい。次に述べる私の意見は関東の有力な知事と一致して意見でもあるが、国政選挙で失敗して議席を減らしても主要三役はじめ主要大臣たちは「責任」をとらず、その後も何らかの役にとどまっている不思議。

 本来なら枝野も玉木も責任をたらなければならない立場。双方ともケンカ両成敗で両代表とも辞任して後任にバトンタッチすべしなのである。それを全然実行しないのは民主主義でない。

 かつて自民党の三角大福の時代、政権取りに失敗すれば、主流、反主流が入れ替わった。今の野党は信賞必罰がない。ぬるま湯だ。

NHKの人事権、財政権を批判する久米宏に大拍手

 今年5月からの令和時代は新しい時代の到来を予言している。たった3カ月で参院比例区で2議席(228万票)を得た山本太郎代表の「れいわ新選組」は「消費税に反対」し、最低賃金を求めた「生活苦・年金者」の人たちを守る真剣勝負でなりふりかまわず。

 その2議席に重度の身障者に議席を与え、山本代表自らは東京の選挙区から比例に転出したため落選したものの、比例区候補では99万票の個人票を集めた。

 この99万票は次の衆院選では100人規模の候補者を立てるというから、台風の目となろう。都内で売れゆきのよい夕刊タブロイド紙は次の「れいわ」票で「36議席」と早々と予測する数字まで掲げている。

 一方、「NHKから国民を守る党」(N国)は参院比例区で1議席を得た。「NHKをぶっ壊す」を合言葉で代表となった立花孝志は、衆院選で出馬してくる可能性が高い。(注・19年の統一地方選では、東京、千葉などで26人の公認候補当選)

 立花氏は受信料を払った人だけがNHKを視聴できるようにする「スクランブル放送」を主張しているが、私も大賛成だ。

 参院選告示の数日前、元ニュースキャスターの久米宏氏がNHKの朝の番組で「政府国営のNHKが人事権と財政権を握るのは自由主義国家になじむものではなく、世界でもこんな民主国家はない」と批判した。私も同感だ。

 そこで、政治が与野党とも、こんなぐうたらな日本政治なら、「れいわ」と「N国」が合体して次の総選挙で自公を脅し野党を驚かせるほどの力を発揮してほしい。

令和元年(2019年)7月27日
村井 実