天皇が超法規で「国民協力」を訴えるべし

=コロナ禍は未知に世界の日本第三次戦争=

 首相は4月7日夕、「新型コロナ緊急事態宣言」を出した。(この日の宣言まで日本国内の患者は5179人、死者109人)

 対象は、東京、神奈川、埼玉、千葉、大阪、兵庫、福岡の7都府県。コロナ対応の「特別措置法」に基づく緊急事態宣言は初めて。

 上記のような宣言はあまりにも遅く、昭和20年の敗戦に次ぐ敗戦とみなす識者も多い。

 昨年12月ごろから中国から伝わり、1月からヨーロッパは次々とコロナ禍で地球崩壊危機に陥っているにもかかわらず、日本は他人事のような気持ちで政治は動かず平然としていた。

 台湾、韓国は日本ほどコロナ禍は進行せず、医療先進国といわれた日本は医療崩壊で暴走。そのツケは日本に向けられている。

 そんな中で日本は、北海道の鈴木知事が2月28日、北海道内に向けて緊急事態宣言を出したのは周知の通り。

 鈴木道知事は、この時、「命がけでコロナと戦い、北海道人の命を守る」と発言。

 3月に入って大阪の吉村府知事も役所情報を得て、コロナ危機ゆさぶり発言。

 この頃、首相、都知事、森オリンピック組織委員長は、オリンピック開催に目を奪われて、コロナどころではなかった。

 しかし、次々と中国やヨーロッパのスペイン、イタリア、フランスなどのコロナ禍による患者、急増を横目に首相は、ようやく重い腰を上げ、3月27日、「緊急事態宣言」らしき言葉を並べたが、線引きがハッキリしなかった。都知事と首相の会談もギクシャクしていた。

 本来なら、北海道知事、大阪府知事に続いて、首都の小池知事の緊急宣言がほしかった。安倍首相と歩調を合わせた「4・7宣言」は政治家の決断力が弱く、日本列島をグチャグチャにしてしまった。

 NHKテレビの4月7日の首相会見は、コロナ禍に対する決断力遅く、首相の言い訳ばかりの芝居に終わった。マスコミも忖度して笑っちゃう。

 防大医の元教授は私に次のように訴えた。「中国はじめヨーロッパでコロナが猛威をふるって地球を巻き込んでいるのに、日本の医療界は全くなっていない。政府の専門会議では、もっと早くから国民に向けてコロナ禍の内容を逐次、示すべきだった。中国や欧州各地で悲惨な例が進行しているのに、その対処もやらず、政府に止められて、発言できなかったのだろう。日本医学界、政界とも無責任すぎる。人の命を何と思っているのだろうか。」

 防大医の元医師の発言は、命の危機管理意識は早くから他を圧倒していた。

 先の首相発言(3・27)があっても、千葉、愛知、京都、兵庫の知事らは「東京とは違う」と笑っていた。しかし、その後、知事連中は手のひらを返したような釈明ばかりで患者は急増に驚いていた。

 そんな中で大阪府知事の能力と実行力と若さに「すごい日本人がいるものだ」とビックリ。脱帽だ。

 私たちのシンクタンク仲間では、北海道知事発言(2・28)以前から、東京、千葉、神奈川、埼玉、山梨の首都圏以外に、愛知、大阪、京都、兵庫、福岡の10都府県をあげた。それは単純に言えば、都市型の人口過密だからです。

 さらに車社会で県境はない。公務員という47都道府県の自治体は一度バラバラにして再改革したらよい。

 NHKに限らず日本マスコミは、重大なコロナ戦争の失敗と批判を語らず「コロナ禍、出動の遅れ」を伏せて、政府と医師グループの釈明ばかりに明け暮れているのが今の姿です。(詳細は週間朝日「いま病院が危ない」4・10、「コロナや野放しの実態」4・24)

 医学界で働く医師、看護師らは日夜少ない人数で命がけで働いている姿こそ涙ぐましい。

 歴史の中で菌によって民族が消滅したり、消えた国家もある。戦争は武器だけではない。コロナ禍とは、まさしく目に見えない空気戦争であつことを日本人も日本政治家も軽く見ている。

 朝日は、4月15日の朝刊トップ見出しを「世界恐慌以来、最悪の不況」とした。これは時代にマッチした出色のタイトル。

 内容は、国際通貨基金(IMF)によると、今のコロナの感染拡大で大恐慌期の1929年(S4)から1932年(S7)の世界大恐慌期以来、最悪の同時不況だ、ということです。当時、先進国経済16%減、世界経済10%減。

 この時代の米国経済は大恐慌から浮上できず、国民は当時、人気の高かったスタンフォード大のフーバー学長(総長)を大統領に選出した。その後、4年間も米経済は沈没。大統領の座を追われるようにして消えた。

 それから半世紀以上もたった昭和62年、昭和天皇が亡くなる頃、私がフーバー研究所に呼ばれるハメになったのも何かの縁。フーバーのように大学者になれても政治難しい──ということは、今も昔も古今東西、変わらない。

 目下、日本社会はゴールデンウイークを前にして、日本政府、医学界の勧める「国民の8割自宅待機」にどこまで協力するか、注目される。

 このままで日本民族はどこへ流れていくのか。オリンピック1年延期でもその先が見えない。

 時代は不透明である。こんな時こそ、天皇をかざして日本国民にコロナ禍防止のための協力を呼び掛けるべきである。天皇が国難の国民を助けるのは今でしょ !

 先日、イギリスのエリザベス女王が全イギリス人に向かって、コロナ防止の団結と協力を呼びかけた。

 日本もそれに同調して、天皇が日本国家国民に向かって「コロナから国民を守れ!」と宣言すべしである。

 これに対し「イギリスと日本の憲法は違う」との声もあろうが、この時代だからこそ「超法規」で天皇を持ち出すべきである。日本人のような天皇崇拝は、他国にはない。

 戦前の天皇制には反対だが、戦後の天皇制では私は天皇主義者である。

 ようやく5月から日本政府は1人10万円の給付を出すことになった。しかし、これでは零細企業の圧倒的多い日本国民は一カ月ももたない。

 こんな戦時下に近い時代だからこそ、政府は国民生活を守るため、1カ月30万円ぐらい出して、3カ月ぐらい継続すべしである。政府はそのためにある。今こそケチな政府を動かすチャンス。日本国家に「福祉革命」をうながす。生前、田中角栄首相は、私に「政治は生活」と語ったのが印象深い。

 海外を見ると日本人はビックリするであろう。
①カナダの休業補償の救済策は、仕事を14日間失えば月15万円、最大4カ月。一律支給の制度を 4月6日に始めた。
②フランスでは、外出禁止が3月半ばに始まって、すぐ政府が救済策を発表。売上が前年同じ月より7割以上減った個人事業主や小規模企業に、月、約18万円支給。
③イギリスは、3月下旬、休業の雇用労働者やフリーランスに、最大で賃金や平均収入の8割、約34万円を3カ月支給。
(①、②、③は朝日、4・20から転載)

 日本は経済大国だと久しく言われて世界からチヤホヤされてきたが、こと社会福祉とか国民を守る生活レベルでは福祉国家とはほど遠い。

 こんな日本に誰がしたのか。橋本龍太郎政権以来、「官僚中心の政治」を徐々に「首相官邸政治」に権力を移して、安倍政権で長期になり官邸の取り巻きは昔のお友達になった。

 このため、実力のある官僚や政治家は排除されて、官邸が機能していない。安倍首相は2月27日、
「学校休校」を突然発言した。これに関して二階幹事長、菅官房長官とも耳にしていない──と言ってむくれた、と伝え聞く。

 上記のように首相が学校休校を発言したのに、4月、荻生田文相は休校にしたような、しないような・・・いまだにハッキリしない。

 だから学校は全国バラバラで休校したり、再登校したり。学ぶ物にとっては大めいわくだ。

 私はコロナ禍が拡大した時から“日本の全学校を休校にすべし”の論者です。学校を1週間、いや、1カ月や2カ月休んだからといって・・・人生が狂う訳ではない。こんな異常な時代こそ、もっと子供を自由に遊ばせるべし。

 塾だ、習字だ、英会話だ、習い事だ──と目いっぱいの「子供しばり」こそ、子供の情操教育に余裕なく、「学校内いじめ」、「学童自殺」が尽きない。

 日教組にしても日教組委員長が愛人をつれて池袋のラブホテルに入りびたり。「労働貴族ここに極まれり」と週刊新潮(H28・10・20号)に写真キャッチされても、組合自身に批判勢力はなく、安倍一強自民にそっくり。

 教育もまた崩壊して文部省に昔のおもかげはない。

 1カ月後の5月6日、コロナ緊急事態宣言が解かれる予定だが、解かれないだろう。政府が描く給付金10万円の主戦場が始まる。

 「感染拡大」と表裏一体の「企業倒産」を阻止するには、時間との戦い!今もって(A)ワクチンが成功せず(B)感染ルートが6割以上不明──で楽観視する材料少なく、長期化する可能性高い。

 橋下徹氏(元大阪府知事)は「国難の時間との戦いと、国難に見合った国債の発行」と強調する。私も同感だ。

 橋下氏は「政治家はどんなことがあっても公務員並みに収入が安定しているから、政治家の覚悟なく、そこにあぐらをかいて痛みを感じていない」。

 コロナのノロノロ政策の日本政府を見ていると、橋下氏の主張する「借金」にどう対処するかを検討する余裕がない。後手後手ばかりで経済破綻になる地獄絵図が待っている。それが目に見えない空気戦争のもたらす現実である。

 4月23日午後11時半現在、日本国内でのコロナ感染者は12428人、死者328人。東京の感染者は3572人、死者87人、冒頭の数字比では猛スピード増だ。

令和2年(2020年)4月
村井 実